ビジネスとしての動画配信サービス

ビジネスとしての動画配信サービス

ビルゲイツ 未来を語るMicrosoftの創業者、ビル・ゲイツは1995年に発売した「ビル・ゲイツ 未来を語る」の著書の中で、将来、テレビは放送終了後にいつでも見たい時に見たい番組が見れるようになる、と予言していました。

情報ハイウェイと名付けられた未来像で、今聞いたら少し古めかしい印象をうける名前ですが、インターネットが始まって間もない時期で通信速度も現在の1/100以下のアナログ回線を使っていた頃に、そのような未来を予見していたことには今更ながら驚かされます。

2015年、日本にNetflixやHuluがサービスを開始し、瞬く間にビデオ・オン・デマンド(VOD)が普及しました。VODというのは業界っぽい表現で「動画配信サービス」という名称の方が一般的でしょう。

ビル・ゲイツが登場を予言していた動画配信サービスは、広く一般に普及するのに20年近くかかることになりましたが、実現されました。

このページでは、そんな動画配信サービスを、ビジネスの観点から整理しました。

このサイトは動画配信サービスを比較・検討するための情報を発信しているので、サイトの趣旨とは少し外れるかもしれませんが、ビジネスモデルとしての動画配信サービスを知ることで、サービス選択の際により適切な判断ができるようになったりするのではないかと思い、記載することにしました。

私は、動画配信サービスの事業会社で働いたり取引を行ったりした経験がなく、あくまでユーザーとして2015年頃から動画配信サービスを使ってきた、というだけですので、記載内容には一部推測が含まれています。

資料を参照する際はできるだけ出典を記載し、できるだけ客観性を担保するように心がけますが、ご覧になられる方で、もしも学術的な裏付けなどに利用される場合は、必ずご自身での事実確認をお願いいたします。また、執筆時点(2020年10月)での情報ですので、情報が古くなっていないか合わせてご注意ください。

ネットで見れる動画のカテゴリ分け(定義)

動画共有サービス動画配信サービス
作成者アマチュア(誰でも)スタジオ・制作会社(プロ)
マネタイズ方法広告収入サブスクや個別課金
視聴無料有料
内容バラエティが多いストーリー性のあるものが多い

まずは言葉の定義から。

インプレス総合研究所のレポートにある定義を流用します(出典:動画配信サービス調査報告書

動画配信サービスと動画共有サービスは似た名称ですが、作品の提供元が異なります。

動画の視聴方法はインターネットを使ったもの以外にも、セルビデオ(販売)や有料放送といった手段がありますが、このページでは取り扱いません。

動画共有サービスはアマチュアによって制作された作品の共有が目的のサービス

代表的なサービスとして、国内ならYouTubeニコニコ動画、海外ならDailymotion(フランス)・Veoh(アメリカ)・パンドラTV(韓国)・YOUKO(中国)などがあります。

特に世界的に人気なのはご存知YouTubeで、動画共有サービスといえばYouTubeというくらいの知名度ですよね。

これら、動画共有サービスのユーザーは主に「発信者」と「視聴者」と「広告主」に分かれます。

映像のプロではない人が、動画作品の発表の場として使っており、様々な作品が公開されています。当然、共有サービス側もタダで動画の共有をしているだけでは儲けが出ませんので、マネタイズが行われています。主な収入源は広告主からいただく広告費です。アップロードされた作品の最初や途中に広告(CM)を挿入されるようになっており、CMの再生に対して広告費を請求する形になっています。

沢山の動画が作られる方が広告を見る機会が生まれますので、共有した人にも広告費の一部が支払われるようになっており、YouTubeに動画をアップすることで生計を立てれるほど人気になっている人をYouTuberと呼んでいます。

作品内容は当然、動画に関してズブの素人が発信していることがほとんどで、内容についても自主制作の映画のようなものではなく、「やってみた」などの面白企画系の作品が多いのが特徴です。

最近では芸能人が制作を始めているケースも目立ってきており、特にお笑い芸人は有名・無名にかかわらず多数の方が動画を配信されています。

芸能人がYouTubeに参入したのはどちらかといえば後発で、一般の方でYouTuberといわれる方が先行し、活躍されました。代表的なところでは、

あたりでしょうか。

どの作品も、「動画作品を見てほしい」という思いから始まっている印象があり、マネタイズは後からついてきているような仕組みです。

YouTubeでは「チャンネル」などの機能により、多くの視聴者を集める仕組みが出来上がっており、再生回数が多くなるほど広告収入も増え、益々多くの配信が行われるといった構図になっています。

動画配信サービスはプロによる本格的な商業目的の作品を配信するサービス

一方、動画配信サービスは、映像のプロによる本格的な作品の配信を中心としたサービスです。

日本では2015年に Netflix Hulu が上陸したことから本格的に普及しはじめました。

共有サービスでは主にバラエティ作品が中心ですが、映画・ドラマ・アニメといった「ストーリもの」が配信の中心です。

動画共有サービスが視聴者から料金を取るのではなく、広告主から料金を取る、「民法テレビ型」であるのに対し、動画配信サービスはユーザーから直接視聴料にあたる月額料金を取る「有料放送型」の課金モデルになっています。

また、毎月一定額の料金で多数の作品を見放題にする「サブスクリプション」という仕組みをとっている他、個別の作品に対して課金する「レンタル=都度課金」を組み合わせている動画配信サービスがほとんどです。

視聴自体に費用がかかるため、広告は挿入されません。

プロの制作スタジオが制作した本格的なエンターテイメント作品ばかりのため、映画館で上映されるような作品が中心です。

全動画配信サービス(一覧)

動画配信サービスは日本では40社近くあるといわれています。このうち、比較的有名でユーザーの多い動画配信サービスは以下の通りです。

動画配信サービス税込月額料金配信数無料期間
U-NEXT
U-NEXT(ユーネクスト)
2,189円 170,000本 31日
hulu
Hulu(フールー)
1,026円 60,000本 14日
dTV
dTV
550円 120,000本 31日
amazon
Amazonプライムビデオ
408円 (年払い)
500円 (月払い)
70,000本 30日

danime
dアニメストア
440円 3,100作品 31日
fod
FODプレミアム
977円 40,000本 2週間
videomarket
ビデオマーケット
550円 ~ 230,000本 入会月
videopass
TELASA(ビデオパス)
618円 10,000本 30日
tustaya
TSUTAYA TV
1,026円 85,000本 30日
paravi
Paravi
1,018円 8,000本 2週間
dmm
DMM見放題chライト
550円 7,000本 2週間
kangeki
観劇三昧
1,045円 1,264本フリープラン有り
netflix
Netflix(ネットフリックス)
880円 ~非公開なし
ABEMAABEMA 1,056円26チャンネルフリープラン有り
DplayDplay 750円 (スタンダードプラン)
1080円 (プレミアムプラン)
約7000本 7日間
フリープラン有り
ディズニープラス(Disney+)ディズニープラス(Disney+) 770円 約800作品 31日間

動画配信サービスの市場シェア

動画配信サービスのシェア

(出典:動画配信(VOD)市場5年間予測(2020-2024年)レポート

動画配信サービスのシェアはいくつかの資料があり、資料毎に調査方法や条件が異なるので若干違いはあるものの、上記のようなシェアとなっています。

各動画配信サービスの特徴や戦略

上記は弊社でサービス内容などを紹介しているサービスになりますが、特に人気の高いサービスのみ、もう少し詳しめの説明をしていきます。

U-NEXT

概要と特徴

  • USEN系列の会社といえば少しイメージしやすくなるかと。
  • 日本の動画配信サービスにおいて、見放題の作品数がNo.1となっています。
  • 雑誌が約 80誌 見放題
  • 月額料金内で電子書籍を購入することが可能

戦略

料金やポイント設定に最大の戦略が見られます。

月額料金は日本のVODの中でも最高値になる 2,189円 。この料金にはレンタル作品などを利用するための 1200 ポイントが含まれています。

ポイントをやめ、その分を料金から抜いてしまうと、1000円程度になり、他社とそうかわらなくなり価格上の競争力は高まります。ですが、都度課金を嫌うユーザーが全く課金しなくなり、1顧客当たりの収益が減ってしまいます。

ポイントの意味は「レンタルにかける料金の先払い」になります。現金と異なり、有効期限を設定できるのが最大のミソで、見放題作品も多いことからポイントの使い道に困るユーザーも出てくるため一定数は期限切れで失効しているはずです。失効分は利益になるはずですので、作品の仕入れコストに充てることも、純粋に利益化することもできるようになります。

1ユーザー当たりの料金が500円程度のユーザーに比べるとユーザーの質もよくなり(平たく言えば文句をつけるユーザーが減る)、ユーザー獲得にかける費用を捻出できるため、投資上も有利になります。

原資をしっかり確保して、価値が高まることに投資していくことで、優良客を多く抱えるようにしていこうとしているのと、エンタメ分野から派生したビジネスとの相乗効果を狙う戦略をとることができます。実際2017年からはy.u モバイルを開始し、格安SIMにU-NEXTの利用料金を含めて付加価値を持たせたサービスも開始しています。

本質的な価値提供を重視している

というのが重要な戦略目標になっている印象です。

Hulu

概要と特徴

  • 日テレ系の動画配信サービスであるため、日本テレビの番組の見逃し配信や、スピンオフ作品に強みを持つ
  • 日テレの番組の最後にHuluの宣伝を入れることができる
  • 日本では古参の部類に入るため、抜群の知名度を持つ。パッとすぐ思い付くのHuluかNetflixといって過言ではない。
  • 再生デバイスの対応数・支払い方法の対応数が非常に多く、見込み客を広くとっている

戦略

元々は外資系というか、アメリカで始まったHulu。現在はアメリカのHuluもディズニーが完全子会社化しており(2019年)、日本では2014年より日テレの傘下に入ったため、ある意味原型をとどめていないくらいに運営母体が変わったサービスになっています。

日テレの子会社化されるまでは海外ドラマに強みを持つ会社であったため、現在も海外ドラマはHuluが最速のイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、現在はどちらかといえば日テレの動画配信サービスであるという性格が強く出ており、海外ドラマは他社の方が強い状況となっています。

Huluというネームバリュー・知名度を最大限に活かしながら、日テレのオリジナルコンテンツなども見れる動画配信サービス、というのが正しい認識でしょう。

配信内容は他社と比べて極端に多くはなく、かといって少なすぎもせず、比較的人気の高い作品のみが扱われており、セレクトショップ的な内容になっています。反面、これは私個人の印象かもしれませんが、配信契約の持続が短めで、入れ替えが頻繁に行われがちな印象を持ちます(要はすぐに配信終了になる)。

不人気の作品を長期間ホールドせず、人気作品にできるだけリソースを集中させ、場合によっては独占配信なども行うといった配信内容の戦略がとられているように感じます。

また、事実として対応デバイスの豊富さ・支払い方法の選択肢の豊富さは他の動画配信サービスよりも優れており、間口を広げて見込み客を最大化する戦略がとられているように思います。

サービスの使い勝手についても段階的ではありますが、他社と比べて下回る部分をどんどん減らしていっており、例えばオープニングスキップへの対応や、別サービスにはなりますが、レンタル作品への対応など、サービス品質自体への投資も積極的に行われています。

料金や配信内容などは平均的であり優等生的な位置取りをしつつ、幅広い間口で利用者を拒まずに日テレ特化など強みも見出している、そんな戦略です。

dTV

dTV

概要と特徴

  • ドコモの運営する動画配信サービス。携帯ユーザーをターゲットにしてきた経緯が仕様にも表れている。
  • スマホ契約の抱き合わせでユーザーを(強引に)獲得してきたこともあって、かなりのシェアがあった(近年は低下傾向にあるかも)
  • テレビ系のような、配信コンテンツに強みのあるバックボーンはないが、全体では 120,000本 の配信数がある(ただし、うち10万本近くが音楽系動画)
  • 激安といえる価格で最安値に近い料金設定、複数加入も視野に入れやすい

戦略

ドコモの運営するサービスということもあり、どことなくスマホユーザーがメインターゲットではないかと思える設定が多いのがdTVです。

画質は最近でこそHD対応画質の作品が増えてきたものの、2018年頃まではSD画質の動画が多く、テレビで見るには厳しい画質になっていました(スマホで見るには動画のダウンロード容量を考えてもベストです)。

新規契約をする際に、何かしらキャンペーンの適用条件としてdTVのお試し加入が条件になっていることもあり、抱き合わせでのユーザー獲得に成功。

価格が破格の安値設定のため、解約忘れも含めて相当数が契約していたと思われます。

ですが他社に少しずつユーザーを取られている印象があり、近年はユーザー数を減らしている印象があります。

ドコモのブランド力を最大限に活用した新規獲得戦略をしており、さらに携帯での利便性を高め、通信の多い若年層が好む音楽動画などを配信しているなど、他のサービスに比べるとやや若年層寄りのサービスではないかと思われます。

Amazonプライムビデオ

Amazonプライム・ビデオ

概要と特徴

  • 通販サイトAmazonが手掛ける動画配信サービス。Amazonの会員サービスのAmazonプライムの一部として提供
  • Amazonの囲い込み戦略と密接な関係を持つ
  • 元々利用者が非常に多いAmazonなので、相乗効果が非常に高い
  • 見放題も多いがレンタル色も強く、定額以外のマネタイズ手段も撮っている
  • チャンネルなどプラットフォームとしての戦略も

戦略

Amazonは2016年3月まで、全商品送料無料としてきました。それが4月になり、突如2000円以下は350円の送料が発生するようになりました。

そもそもこの設定自体が実質値上げではなく、「元に戻った」という形になっています。この例外がAmazonプライム会員になっていれば、引き続き送料が無料、というものでした。

プライム会員に加入しても、ほとんどメリットがなかったのが一転、Amazonにどっぷりつかってしまった多くのユーザーはまんまとプライム会員になる選択をしました。

Amazonの基本戦略として、ユーザーが価値を感じるまでは無償または格安でサービスを展開し、価値を感じられるような状態になった時点で値上げを実施します。

実際Amazonプライムの年会費は以前まで3900円でしたが、現在は 4,900円 となっています。

Amazonプライムはサービスを次々と増やしており、加入メリットを非常に感じやすい状況になっています。Amazonプライムビデオも単体で契約で増やすというよりも、Amazonの各種サービスの中の一部となっています。

Amazonがしたいことは、日々何らかの形でAmazonと関わり続けるユーザーを増やすこと

になっています。プライムビデオはそのための強力なツールであることは違いなく、単体でも加入メリットがあります。

それに加えてAmazonでの買い物が便利になったり音楽が100万曲以上無料で聞けるようになったりするため、「加入しない手はない」という状況を作って日々何等かの形でAmazonと関わり続ける(料金を支払い続ける)ユーザーを増やしています。

他社の動画配信サービスの内容をAmazonのプラットフォーム上で再生できるようにする、プラットフォームとしての戦略も展開しています。例えばdアニメストアなどはAmazonプライムビデオ上でも利用可能になっています。こちらは手数料を取るという方法ですね。

dアニメストア

dアニメストア

概要と特徴

  • 日本最大級のアニメ専門動画配信サービス
  • 徹底的にアニメジャンルを考え抜いた機能を提供することで「やっぱりアニメ見るならdアニメだな」と思わせる
  • 破格の安さの価格戦略。他の動画配信サービスとのかけ合わせでの利用も。
  • 関連商品の販売も。

戦略

アニメ大国である日本。制作スタジオの数も多く、アニメ市場は関連商品も含めて非常に大きい市場です。dアニメストアはそんなアニメに特化した動画配信サービスです。

dアニメストアのようなアニメ専門VODは複数ありますが、他社に比べて先行していることもあってか、圧倒的な知名度とユーザー数を確保し、頭一つ抜けた存在です。

完全に物量勝負の戦略をとっており、アニメカテゴリに限って言えば長らく配信数1位の座を獲得し続けています。U-NEXTが配信内容で肉薄・一時追い抜きもしましたが、現在はアニメの配信数ではやはり一番多いのがdアニメストアです。

アニメの視聴において重要になる機能は基本的にすべて押さえているといっても過言ではなく、アニメがとにかく好きなら必須のサービスといえるほどです。

対象ユーザーを絞って徹底的に特化していく戦略をとっているサービスです。

Netflix

Netflix(ネットフリックス)

概要と特徴

  • オリジナル作品の制作会社になった、といえるほどのオリジナル作品数
  • リモコン戦略や通信サービスでの専用プラン用意など、ユーザーとの接点で入会を勧める新規顧客獲得方法

戦略

Netflixの戦略で特に面白いのがリモコン戦略です(参考:NETFLIXはわずか2500万円で日本市場を攻略した)。利用者の特徴や行動に注目するマーケティング手法が多く取り入れられています

実際サイトを利用すると、行動履歴にそったおすすめ動画が表示され、いかにユーザーの行動を見ているかがうかがえます。

また、早期よりオリジナル作品の制作に着手し、年間1兆円ともいえる制作予算を投じています。

動画配信サービスの配信数競争に巻き込まれると、最終的には似たようなサービスとなってしまうことを早い時点で見ぬきオリジナル動画の制作に活路を見出したのがNetflixです。

ユーザーが求めていることと価値提供

動画配信サービスに対し、利用者はどのようなことを求めているでしょうか。

大きく分けると以下のようなニーズが考えられます。

非日常体験フィクションを中心に、日常では味わえないような非日常的な体験を求める
オンデマンドテレビ番組の見逃し配信を利用することで、オンタイムで見れない作品をチェックする
暇つぶし可処分時間の過ごし方の一つとして動画作品を楽しむ
学習・教養趣味性の高い専門配信サービスや、ドキュメンタリー作品など教養番組を楽しむ

動画配信サービスの提供している動画を楽しむユーザーの目的は様々ですが、従来の「テレビ放送」のように受動的な動画作品の楽しみ方から、

  • 見たい作品を
  • 見たいときに
  • 見たいデバイスで
  • 見たいだけ

楽しむといった能動的な楽しみ方に変化させることが動画配信サービスが提供している最大の価値と言えます。

単に暇つぶしや、何か面白いことがないかな、という発想で視聴するのであれば、YouTubeなどの動画共有サービスでも可能です。

ですが、動画共有サービスは素人の作によって「見てほしい」というスタンスの作品が中心のため、視聴者が楽しいと感じるかどうかはユーザー次第になります。

動画配信サービスで配信される作品は一定の楽しみを保証した内容となっているため、(お金を払った分)確実に楽しめるサービスといえます。

日本と海外とでの動画配信サービスの普及率・理解度の違い

動画配信サービスの普及率

日本をはじめ、アジア圏では無料で視聴できるテレビ放送の内容がかなり充実しています。日本ではテレビはタダで見るもの、というのが一般的な認識です。

一方、海外では有料放送がかなり一般的で、例えばアメリカなどではほぼ全世帯何らかの有料放送に加入しているといえるほどの普及率があります。

このため、海外では動画配信サービスは「置き換えるもの」であり、既に支払っているケーブルテレビなどへの支払いをネット配信の動画配信サービスに置き換えるだけ、という認識があるため非常に普及しやすい土壌があります。アメリカでは80%近くの普及率があり、ヨーロッパでも60%以上の普及率があります(参考:Syno 定額制動画配信サービス(VOD)の海外のシェア率は?各国人気ランキング!

一方日本では民放がまだまだ頑張っている状況で、「テレビはタダで見るもの」、動画配信サービスは「追加で契約するもの」となっているため、普及率は海外ほどは高くありません。日本の動画配信サービスの普及率は21.5%といわれています(出典:インプレス 動画配信ビジネス調査報告書2020)。

総務省によると、生活時間から睡眠・食事・仕事や家事育児にかかる時間を除いた可処分時間は、平均すると6時間9分にもなるそうです(出典:総務省 社会生活基本調査)。個人的には少し多すぎる気がしないでもないですが、子供や年配の方も含めた平均値だからかもしれません。

つまり、平均的な日本人は6時間程度自由に使える時間を持っていることになりますが、この時間の使い方の中に動画配信サービスを視聴するというのはまだまだ普及しているわけではなさそうです。

とはいえ、現代は昔に比べて規制が多くなってきていますよね。「テレビは面白くなくなった」といわれるようになっており、特に若者の間ではテレビ離れが加速しているといわれています(SNSやYouTubeをしている時間に置き換わった)。

今後はそんな「テレビ離れ」した世代が動画配信サービスを利用していくことも考えられます。

動画配信サービスはどうやって儲けているのか

無料のお試し期間を設定し、ユーザーを獲得

動画配信サービスは無料期間を設定している

動画配信サービスの多くは、いきなり課金を行うサービスが非常に少なく、ほとんどの場合お試し期間を設けています。

7日程度から1か月の範囲で各社バラバラですが、2週間あるいは30日間のお試し期間を設定するサービスが多いです。

ところで、なぜお試し期間が必要なのでしょうか。

非日常体験が可能な作品をオンデマンドで視聴できるという価値提供をしているにもかかわらず、お試し期間が必要なのには以下のような事情があります。

  • ネット配信のため、再生デバイス・回線状況をサービス提供側で保証できない
  • 歴史がまだまだ浅く、普及率も高くないため、ユーザーがサービスを体験したことがない
  • 競合がすでに多く存在するため競争上必要(サービス面で劣ることになり、負ける)

ユーザーの環境へのトラブル対応が不要になる

特に、1つ目の事情の影響が大きいものと推測されます。

動画の再生は、再生デバイスの手元にすべてのデータをダウンロードしてから再生するのが基本でした。しかし配信・再生技術が進歩し、ストリーミング形式でダウンロードをしながら再生ができるようになりました。

とはいえ、1本の動画を再生するには相当な量のデータダウンロードが必要です。日本はブロードバンド回線の普及が非常に進んでおり、動画の再生にはほとんどの場合、問題がない速度が出ます。

しかし集合住宅などで共用回線を使っている場合など、通常のインターネットの閲覧には何ら支障がなくても、動画の再生となるとやや回線が細い、といった場合がまだまだ残っており、快適に視聴できないケースが発生する可能性があります。

動画の配信が専門の会社が、回線の面倒や、再生デバイスの面倒まで見ることは不可能です。

そのため、契約を検討しているユーザーの環境で正常に再生して楽しめるかどうかをユーザー自身で確かめてほしい、もし使えなければ利用は控えてほしい、というのが動画配信サービスの本音ではないでしょうか(推測です)。

無料期間を設定せずにいきなり課金を行うと、視聴できなかったユーザーがいた場合に返金の手続きをとる必要が生じたり、回線やデバイスに対してサポートが必要になります。ユーザーサポートには多くのコスト(サポートスタッフの人件費など)が発生するため、利益を圧迫することになります。

使ったことがないから、を原因に契約されない状態になるのを防ぐ

動画配信サービスが日本で普及し始めたのは2015年頃です。

インプレス総合研究所による動画配信ビジネス調査報告書2020によると、2020年時点の普及率は21.5%と報告されています。前年が16.0%だったことから大きく普及率を伸ばしているものの、それでもまだまだ普及率が高い状態とは言えません。

わかりやすい言い方をすれば「使ったことがない人が大半」の状態です。

これまでに一度も使ったことがないサービスに対して、少額であってもいきなり課金するとなると身長になりますよね。

反対に「最初1か月は無料です、気に入らなければ解約すれば課金されません」といわれると一気に敷居が下がり、「試してみようかな」と思うはずです。

日本はテレビ放送が基本無料であることが当たり前とされてきていることもあり、有料の放送に対してまだまだ理解が得られていません(レンタルビデオなどその場限りの課金は理解されやすいのですが、継続課金となると一気にハードルが上がります)。

動画配信サービスの提供側からすれば、1か月以内であってもユーザーに無料で自由に使ってよいとすると、その分のコスト負担は当然あります。回線速度・サーバーリソース・配信権の利用料などです。

ユーザー獲得の観点からは、動画配信サービス各社は無料のお試し期間を設定せざるを得ないのです。避けれるなら避けたいが、避けることができない必要経費のようなものとして扱っていると思われます。

競争の観点から急にやめにくい

動画配信サービスは一度利用し始めると、かなり継続性の高い(中毒性の高い)サービスです。

動画作品は次から次へと制作され、それらを配信している限り、「見たい作品が一つもない」状態に陥ることが少なく、長期契約するユーザーが多いサービス形態です。

そのため、各社しのぎを削ってユーザーを獲得しようとしています。

競合他社との競争上の観点から、初回申込時に無料期間を設定していないと、サービス面で競合優位性がなくなるため、サービス内容に自信があってもなかなかやめられないはずです。

とはいえ、無料お試し期間中も動画配信サービス側にはコストがかかるので、見直しが入る場合があります。

例えば、Netflixは当初2週間のお試し期間を設定していましたが、無料のお試し期間を完全に廃止しました。

また、FOD・Paraviは当初1か月無料でしたが2週間無料に短縮されています。

今後も無料のお試し期間を廃止したり短縮する動画配信サービスは増えてくるものと考えられます。

サブスクモデルで継続的な課金を行っている

ネットを使ったサービスの利用などを、毎月一定の定額課金する「サブスクリプション方式」。

サブスク型のサービスの認知率は27%程度と、課金方法についてもあまりまだ世間一般で理解されている状態とは言えません。

動画配信サービスの特徴の一つでもあるのですが、ユーザーは「利用」はするものの「所有」はしません。

従って、ユーザーが支払っているのは「利用料」であって、購入とは異なります。

サブスクリプションモデルがとられていることによるメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

メリットデメリット
ユーザー側
  • 何本見ても定額なので安心
  • 必要がなくなればいつでも解約できる
  • よりよいサービスに乗り換えしやすくなる
  • 所有するわけではないので録画・保存できない
  • 急に配信が終了してしまい、見れなくなる場合がある
  • 利用頻度が下がってもコストが発生する
動画配信サービス側
  • 継続的な売上を確保できる(収益予測がつきやすい)
  • 売切でないので継続的にサービス内容を改善し続けることができる
  • 一旦契約が取れると継続することが前提
  • 常に飽きさせない工夫が必要
  • 売切でない分、サポートが必要になる

ユーザーとして最も気を付けるべき点は利用頻度が下がってもコストが発生し続ける点で、それはそのまま動画配信サービス側にとってはメリットになります。

動画配信サービスにとって、サブスク型になっていると売上見込みが立てやすく、戦略に落とし込みやすいのが最大のメリットと言えます。

どの程度のプロモーションが必要か、どこまでコストをかけれるのかが事前にわかるだけでもメリットは大きいです。

版権と配信権

動画配信サービスは版権元から配信権の契約を行い、動画を配信します。

契約の内容によって、次のような制限が発生する場合があります。

  • そもそも配信自体がNGの作品
  • ダウンロードがNGの作品
  • 見放題にすることができない作品
  • 独占契約が結ばれ特定の動画配信サービスでしか配信されない作品

これらは作品単位で発生したり、スタジオ単位で発生したり、サービス単位で発生したりとまちまちです。

例えばスタジオジブリの作品はどの動画配信サービスでも配信が行われていません。動画配信サービス自体に理解がないか、再生時のクオリティの保証ができないことに対して制作サイドからの許可が出ないなどの理由が考えられます。

また、スキャンダルを起こした俳優が出演している作品は配給元からストップがかかり、配信されることがありません。とりわけ薬物で逮捕されたりすると一発でアウトです。

その他、ジャニーズ事務所の所属タレントが出演しているドラマなどは肖像権の管理が厳しいからか配信されないことが多いです(最近解禁されました)。

テレビ局が制作にかかわったドラマ作品などはそのテレビ局が運営している配信サービスでしか見ることができなかったり(例:半沢直樹)もします。

動画配信サービスにとって、人気の作品はそれを独占しているだけでサービスの加入に大きな影響力を持つため、人気の作品を独占的に配信する契約を結ぶことはよくあります。

配信契約において、比較的影響の大きいのが動画配信サービス各社が打ち出しているダウンロード機能です。

例えばセルビデオとしてよく売れている作品などは、購入促進のためにダウンロード自体をできなくしたり、都度課金で購入したユーザーに限りダウンロードできるようにしたりする場合があります。

動画配信サービスにとっての重要な指標

★こちらは予測になりますが、大きくは外していないかと考えています。

解約率

サブスク型のサービスは動画配信サービスに関わらず、解約率というのは非常に重要な指標です。

サービスの利用をやめるのは、使わなくなったからで、ユーザー自身の事情によるもの・サービスの事情によるものに分類されます。

ユーザーの事情による解約

  • 契約してみたがほとんど使わなかった
  • 料金の支払いが厳しくなった
  • 無料お試し期間で終了するつもりが手違いで契約したままだった

上記のような、ユーザーの事情による解約は一定数あるはずで、これは動画配信サービス側で改善が難しいものです。

サービスの事情による解約

  • 見たい動画をあらかた見終え、解約しても構わないと感じた
  • 使い勝手が悪く、継続する価値を見いだせない
  • 他社の方がサービス内容に魅力を感じた

上記のような、サービスの内容がよければ継続できたようなケースの場合は改善を行い、解約率を少しでも下げることが重要になります。

動画配信サービスの普及率はそれほど高くはなく、ユーザー数は増加傾向ではあるものの、サービス提供会社も多いため、獲得競争が行われています。

検索広告やアフィリエイト広告、TVCMなどのマス広告など、認知度を上げたり獲得のための広告など様々なプロモーションが行われているため、解約されると1ユーザーあたりの獲得コストが上がることになります。

解約の際にアンケートを実施してサービスの改善を行っているほか、ユーザーのサービスの利用状況を計測したり、定期的にユーザーの一部にウェブ上での簡単なアンケートに参加してもらうなど、様々な方法でサービスの満足度を高める努力をしています。

契約増加数

全体の契約の増加数も重要な指標のはずです。

動画配信サービスでは、単一のプランにしている場合が非常に多いです。複数のプランを用意すると、ユーザーを惑わせてしまうことになるため、シングルプラン化していることがほとんどです。

単一のプランの場合、売上は必ずしも重要指標にならない場合があります(いくら売上たかは掛け算をすればわかるので)。

後ほど詳細は記載いたしますが、現在は契約者数がそろそろ横ばいになり始めているものと推測しています。

というのも動画配信サービスを使う可能性があった層はほぼどこかのサービスに加入し終えており、今後は新規獲得よりもいかに競合との差別化を行って付加価値を見出せるようにするか、が重要になってくるフェーズに入ろうとしていると感じているためです。

コロナ禍で巣ごもり需要が伸びた結果、契約数を伸ばすサービスが多かったのも事実ですが、外出自粛が理由で契約したユーザーはいつか外出解禁になった時には離れていく可能性が高いです。

単純に契約数を稼ぐフェーズから、契約者の質も重要になってくるフェーズに移行しつつあります。

配信数と仕入れ

動画配信サービスが各社とも大きくうたい文句としているのが「当サービスは〇〇万本が見放題」ということです。

契約したら何本見ることができるのか、というのはユーザーにとっては非常にわかりやすいアピールになります。

レンタルビデオを利用したことがあるユーザーなら、10本も借りたらすぐに2000円近くかかるのに、何本見ても1か月1000円前後で済む、というのは非常に魅力的に映り、配信数が数万本もあるとなればもはや見切れないほど多くの作品を見ることができる、という心理になります。

実はこの「本数」は実にうまい表現方法で、全く嘘はついていないのですが、作品選択時は「作品数」に切り替わるのです。

作品数換算だと、100話以上ある長編アニメでも1作品です。

吹替版と字幕版のある映画なら、2本で1作品です。ユーザーはどちらかしか選択しなくなります。

実はユーザーにとって重要なのはどちらかといえば「作品数」なのですが、動画配信サービス各社は「本数」が基本のカウント方法にしています。

当社で調べてみたところ、実質的には本数の1/10が作品数であることが多いです。

動画配信サービスの規模を図る指標として「本数」が使われますが、実作品数で言えば概ね1/10作品と考えると「思ってたより見たい作品が少ない」といったことを避けることができます。

オリジナリティ

動画配信サービスは配信本数を競い合っている部分がありますので、究極的にはどのサービスでも同じ動画が配信されるようになってしまいます。

そうなってしまうと価格やサービス面でしか差をつけることができません。そこで各社共自社サービスでのみ配信できるオリジナル作品を確保しようと躍起です。

オリジナル作品の調達方法① 独占配信契約

人気が出ることが確実と考えられる作品については、あらかじめ供給元と独占配信契約を結ぶなどして他社で配信できないようにしてしまう方法です。

ただし、この方法はかなりコストがかかるものと思われます。

また、単に費用の問題ではなく、制作会社からすれば少しでも多くの人に見てほしいと思うはず。仮にシェア率の高い動画配信サービスであっても届くユーザーは限定的になるのであまり実施されているのを見たことがありません。

オリジナル作品の調達方法② 他社がレンタルの中で自社だけ見放題

各社がレンタルにする作品を見放題で配信することで有利な条件を作る方法です。

こちらは比較的よく見かけます。

レンタルをしても結局費用を支払わなければならないのなら、動画配信サービスを契約したほうが、トータルで見れる作品数が増えます。

おそらく見放題にしている単品のライセンス料を考えると赤字になるのではと思われますが、会員の維持や新規加入を考えればプラスになることが多いのではと思われます。

オリジナル作品の調達方法③ テレビ事業との連動

動画配信サービスの運営会社は様々ですが、ほとんどの会社は本業として事業を開始したわけではなく、別に本業事業がある場合がほとんどです。

とりわけテレビ局が動画配信サービスを開始するケースは非常に多く、自社の制作した作品を独占配信にすることがよくあります。

代表例として半沢直樹シリーズはParaviで独占公開しており、他社では配信されていません。半沢直樹を視聴するには、セルビデオを購入するか、Paraviを契約するかの2択になっています。

有名なドラマの続編や番外編などのスピンオフ作品が作られるのもテレビ局の制作した作品が多い印象です。

オリジナル作品の調達方法④ 自社で制作してしまう

動画配信サービス自体が自前で動画制作を行ってオリジナル動画を制作する方法です。

代表的なのはNetflixで、制作に書ける予算が年間1兆円とも言われており、もはや動画配信サービスではなく制作スタジオのようになっています。

他にも、Amazonプライムビデオで制作されているドキュメンタルなどはAmazonが制作を行い、Amazonでのみ配信しています。

ライバルとの差別化

毎年たけのこのように次々に新しい動画配信サービスがサービスを開始している中、競争は激化の一途をたどっています。

各VODがどのような競争戦略・差別化戦略をとっているのかまとめました。

差別化戦略① 広告戦略

動画配信サービスはインターネットで配信を行うため、ネットで検索しそのまま申し込んでもらうようになるのが最も効率が高くなります。

そのためには「指名ワード」といわれるサービス名自体で検索されるようになるのが不可欠です。

指名ワードを増やすことを一番の目的に認知度UPの施策を各VODは行っています。

リモコン戦術

これの先駆けとなったのはNetflixです。動画配信サービスを見るデバイスに注目。多くのVODがPCでの視聴に力を注いでいた中、テレビでの視聴に着目したのがNetflixでした。

現在、新しいテレビを購入すると、リモコンには複数の動画配信サービスの「専用ボタン」が用意されています。今でこそこのような状況ですが、2015年あたりから既にNetflixではテレビのリモコンに「Netflixボタン」を搭載し、ボタンを押すと専用アプリが起動するようにしてきました。

利用するデバイスから直接契約を行えるようにしてしまうというのは非常に理にかなった方法であり、他社が莫大な費用をかけてTVCMなどを行う中、Netflixは低コストでTVCM以上の効果のある広報手段を手に入れました。

特に2015年~2016年頃に発売されたテレビではNetflix以外のボタンがないものも多く、ほぼ独占していたはずです。

通信サービスに専用プランを提供

こちらもNetflixが先行して行っている広報手段で、具体的には大手通信会社と提携し、専用のプランを作ることで、サービスの加入と同時にNetflixにも加入した状態にする方法です。

au と連携してNetflixプランを作成し、プランを選択するとNetflixも同時加入になります。

動画配信サービスはインターネットを使って視聴するため、通信会社に直接プランを用意させることで申し込みの段階で他の選択肢を排除する非常に賢い方法ですね。

テレビでの視聴に対してはリモコンで、携帯電話での視聴に対しては通信サービスへの専用プランで対応するといった形となっており、低コストで確実にユーザーを増やしていくことができる施策です。

テレビCMなどのマス広告

マス媒体で幅広い認知をするために、各社とも積極的にテレビCMを仕掛けています。

継続的にテレビCMを打っているのはAmazonプライムビデオ。バチェラージャパンやドキュメンタルなど自社制作の動画が視聴できるのはAmazonプライムビデオだけ、という触れ込みでCMをしています。

年末年始やGWなど長期休暇時などでテレビ視聴が増えるタイミングでは特に多くのVODがテレビCMを放送します。また、人気番組の放送時にはNetflixもCMをうつことも。

テレビCM一つとっても、各社に考え方や戦略が見れる感じになっています。テレビ局が運営しているHulu・Paravi・TELASAなどではドラマやバラエティの終了時に見逃し配信をフックに宣伝することもあります。

差別化戦略② 配信内容の充実

他社との差別化戦略の中で最も基本的な取り組みは配信内容の充実化です。

  • 次のクールで放送されるテレビ番組のPVなどを配信やマイリストに登録しておこう!とうたってクールの切り替わりによって解約が進まないよう工夫する
  • 新作扱いでレンタルとして配信していた動画を見放題に切り替える
  • 配信スケジュールを公開して視聴予約を取る

といった形で取り扱い本数を増やす動きを各社共しています。

もちろん、先述の「オリジナル作品」もより一層充実するよう制作し続けるサービスは非常に多くあります。

差別化戦略③ カテゴリNo.1になる

特定の番組カテゴリで日本一の動画配信数になる戦略をとっている動画配信サービスも多々あります。

典型的なのはアニメカテゴリ。アニメ専用の動画配信サービスだけでも、dアニメストア・アニメ放題・あにてれ・バンダイチャンネル・東映アニメオンデマンドなど多くのサービスがあります。

他にも、ドキュメンタリー作品に特化しているDplay・釣りに特化している釣りビジョン・観劇に特化した観劇三昧など、有料放送に見られる「チャンネル」単位の特化サービスも多々あり、ニッチジャンルでNo.1になることで〇〇といえば△△のようなポジショニングをしするようにしているVODも多々あります。

差別化戦略④ サービス内容・使い勝手の充実

動画配信サービスのキモは確かに配信されている動画の量と質ですが、サービス面・機能面での充実化により他社との競争力を高める努力が行われています。

とりわけ、対応する支払い方法・視聴可能なデバイス数・画質・オープニングスキップ機能・字幕機能・ダウンロード機能で差が出やすくなっています。

「使ったことがない人」がメインターゲットであるうちは配信数や料金などが差別化のポイントになりますが、そろそろ「乗り換えユーザー」「複数契約ユーザー」が増える傾向があり、そういったユーザーにはサービス面・機能面での使い勝手がいいかどうかが差別化のポイントになります。

動画配信サービスをとりまく市場

動画配信サービスがどのような価値を提供し、他社と競争してきたかご紹介してきましたが、ここで動画配信サービス自体が取り巻く市場について再度整理いたします。

映像コンテンツ市場の規模

全映像の市場規模

動画の市場規模

出典:総務省 我が国のコンテンツ市場の規模

有料・無料、マネタイズ方法などを一切問わずに動画コンテンツ全体の市場規模は、約7兆円だそうです

内訳は以下のようになっています。

映画ソフト7,873億円
ビデオソフト4,445億円
地上テレビ番組2兆8,261億円
衛星・CATV放送8,910億円
ゲームソフト1兆6,413億円
ネットオリジナル3,793億円

動画配信サービスはネットオリジナルに含まれるものと見られます。この中にはユーザーが支払わず、広告主が支払う広告料なども含めた数字になっています。コンテンツの全体観を示す資料ですので動画に特化したものではありません。

有料動画のみに絞った市場規模

動画配信サービスの市場規模の推移

(出典:映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査2019

有料の動画市場を見てみると、2012年あたりまでは縮小傾向にありました。これはYouTubeやニコニコ動画といった動画共有サービスが先行して流行り、暇つぶし需要が置き換えられていったことが原因と考えられます。

2013年からは動画配信サービスが少しずつ増え、年々全体に占める割合が増えていっているのがわかります。特にNetflix・Huluなどが日本市場に参入した2015年からの伸び率は顕著であり、主にレンタルから置き換えるような形で毎年30%以上の成長を続けています。

動画配信サービスの登場で、縮小傾向にあった市場全体の規模も大きく増加し、レンタルビデオを動画配信サービスに置き換えるユーザーと、それまでレンタルやセル動画(動画のDVDやブルーレイの購入)をしなかったユーザーにも動画視聴が拡大していっているのがわかります。

こちらの資料には2020年に流行したコロナの影響による巣ごもり需要が含まれていませんが、2020年には全体の市場規模はさらに大きくなることが予測され、外出自粛の観点からもレンタルはさらに大きく下げられることが推測できます。

動画配信サービスの市場の将来性

動画配信サービスの市場規模の成長予測

(出典:ITナビゲーター2020年版 P67

次に動画配信サービスに絞った市場規模を見てみると、2018年時点での動画配信サービスの市場全体では2170億円とされており、2025年までにかけて緩やかに増加していくと予測されています。

特に2021年以降はかなり緩やかな成長となると見込まれています。

急速に拡大していく段階を終え、安定して徐々に成長していく段階に入ったといえます。これまでのユーザーが未利用者中心であったのが、他社で利用経験のあるユーザーの乗り換えが主となっていく、そんなイメージです。身近なものだと格安SIMが良い例ではないでしょうか。

格安SIMも、出始めたばかりのころは乗り換えるユーザーが非常に多かったので急拡大を遂げましたが、現在は3大キャリアからの乗り換えもひと段落つき、格安SIM間での乗り換えの割合が増えているようです。

サービス内容から推測される動画配信サービスの裏側

プロが制作する動画は、制作自体に時間も予算もかかるものです。

自社でオリジナル動画を制作しているサービスも多々あるものの、やはり制作会社やスタジオが制作した作品の方が数は圧倒的に多くなり、需要もあります。

そのため、各社共、配信内容の最終的に行きつく先は、「どの動画配信サービスでも大体同じ作品が配信されている状態」になりかねません。差別化のために様々なサービスが展開されています。

サービス自体の仕様を考える上で、動画配信サービスの裏側が見えてくると考えておりますので紹介します。

この作品が見放題にできるかどうか

ある作品について、この作品を見放題にできるかどうかの判断や、そもそも掲載するかどうかの判断は、以下の条件を満たしている条件があります。

  • 例外的な取り扱いが必要ない、または仕様上改修が必要のないレベルかどうか
  • 仕入れコストの定めている上限以下に収まっていること
  • 新作や制作会社の強い要望で見放題にできない状態にないこと
  • 他社が独占配信契約をしていないこと

作品によって、契約の条件は様々です。

わかりやすいところでいえば、先日まで映画上映されていた作品が、いきなり見放題になってしまうと、映画館で見る価値が半減します。

新作が配信サービスで視聴できる状態になるタイミングで、ほとんどの場合DVDやブルーレイといったメディアでも販売されることになるので、それらの販売額を大幅に減らしてしまうことになりかねません。

動画作品は新作の間が最も「お金を払っても見たい」状態のため、「回収できる間に回収しきる」が鉄則です。

映画館 → 販売 → 新作レンタル → 見放題

の流れが基本です。

また、作品によっては見放題にはしない、という「方針のようなもの」がある場合があり、そういった作品は基本見放題にはなりません。

その他、配給会社からの契約費用として、様々な事情により、一般的な基準よりも少し高めに設定されている場合、再生されればされるほど利益が減ってしまうため、見放題では提供されないことがあります。

動画配信サービスにとって、見放題での配信数が多いことはサービスの利用者の解約率を下げ、新規の会員獲得の原動力になるため、本来はすべての作品を見放題にしたいはずです。しかしレンタルにせざるを得ないのは、主にコスト的な事情や権利関係の事情でそうなることが多いようです。

格安のサービスでは1作品当たりの仕入れコストの上限が低くなりがちなので、当然見放題の作品数は減少傾向にあります。月額2000円近くするサービスなら見放題にできる作品数が格段に増えます。月額1000円前後のサービスの場合は「目利き」が重要で、人気の作品は見放題に、あまり期待できない作品はレンタルに、という取捨が必要になりますが、実際には単純に作品毎の契約コストによって決めているだけのような印象はあります。

ダウンロードの仕様をどうやって決めているか

動画配信サービスでダウンロード機能といえば、もはや必須の機能です。

ところが、ダウンロード機能の仕様はサービスによってかなりばらつきが大きい特徴があります。

  • ダウンロード可能作品数
  • ダウンロード可能デバイス数
  • ダウンロードしてからの保存期間
  • 再生開始からの保存期間
  • オフライン状態での視聴可否
  • SDカードに保存できるかどうか

のようなところで差がつきやすくなっています。

ダウンロード機能はユーザーの端末に動画全体を保存してしまうため、ライセンスの管理が難しくなります。

オンデマンドで動画を再生する際は、

  1. 再生しようとしている動画が配信中で再生して良い作品なのかどうかをチェック
  2. ユーザーが滞納せずに契約中の状態で、再生して良いのかどうかをチェック
  3. 再生開始

といったことが「サーバー上」で行えます。

上記のような「ライセンス確認」はダウンロード機能の仕様を考える上では必須になります。大きくは以下のように分かれています。

  • ライセンスの確認は再生時に行われるべきなので、ダウンロード自体にはほとんど制限を設けないが、再生する際には必ず通信を行いライセンスのチェックを行う
  • ライセンスの確認はダウンロードの際に行えば良い。過剰にダウンロードできるようにしてあると何らかの手段でライセンスチェックをくぐりぬけて再生できてしまうといけないのでダウンロード自体に少し制限を設けておく。その代わり再生時には完全にオフラインの状態でも再生できるようにしておく。

動画配信サービス自体の方針・考え方でも上記のように分かれており、加えてユーザー側には以下のような利便性へのニーズ・要望があります。

  • ダウンロードの本数制限をされたくない、SDカードにも保存しておきたい
  • 完全にオフラインでも再生したい
  • 通信容量を削減できるようにしたい

これに配給元としては、違法ダウンロードにつながるようなダウンロード機能を持つサービス提供者には作品のダウンロードは控えてもらいたい、といったスタンスは必ずあるため、

  • 視聴者
  • 提供元
  • 配信サービス

の3者の要件を満たした「落としどころ」を仕様として決め込む必要があるため、ダウンロード機能の仕様を決めるのは非常に難しい作業になっているはずです。

字幕版をどうやって提供するか

海外作品の視聴において、字幕は必須の機能です。

作品自体の世界観を損なわないようにするため、配信サービス側で勝手に字幕を付けること自体好ましいことではありませんので、通常は制作会社の方から提供されているはずです。

字幕機能については、

  • 日本語の作品に日本語の字幕を提供するか
  • 海外の作品に英語の字幕を提供するか

が大きな差別化ポイントです。

日本の場合、字幕をつけるのは基本は海外作品に日本語字幕を付けることですが、グローバル展開しているNetflixでは多数の言語に字幕が対応しており、ポルトガル語などでも視聴できます。

こういった言語を複数つけるかどうかは、まず第一にコストの問題があります。

海外で制作された作品で、世界中に配給されているのであれば、各国の言語は用意できるはずです。ですが、もちろん費用は別途かかるものだと推測されるため、わざわざコストをかけてまで字幕の対応をする必要があるのか、という問題が出ます。

ここで強みになるのがグローバル展開している動画配信サービスです。日本でも展開しているのはNetflixくらいのものですが、グローバル展開していれば、一つの動画で複数の言語で字幕を表示できるようにしておけば、その国でも同じ映像ソースを使用することができます。

どうせ仕入れるのであれば、各国語の字幕を表示できるようにしておけば他社との差別化につながります。

特に英語作品に英語字幕を表示できると、英語の学習に使えるようになるため、他社で英語字幕が使えないなら独占できるようになるわけです。

余談:字幕については、字幕専門の制作会社があったりします。

主な字幕制作会社一覧

  • 株式会社NHKグローバルメディアサービス
  • フォレストダインシステムズ株式会社
  • ブレインウッズ株式会社
  • 株式会社ジマックス
  • 株式会社フォアクロス
  • 株式会社フジミック
  • リンク情報システム株式会社
  • 株式会社ルルベ

これらの会社では字幕の制作について、1作品あたり1~3日程度で作成して納品しています。

対応する支払い方法はどうやって決めているか

最近ではペイサービスが増加し、ユーザーが料金を支払う手段が増えてきました。キャッシュレス決済サービスの大半が独自のポイントを獲得できるようにしており、囲い込みに躍起になっています。

こういった決済サービスの導入は、動画配信サービスにとっては「あまり数を増やしたくない」というのが本音のはずです。

各決済サービスは、それぞれ「手数料」が発生します。決済金額の数%が手数料になりますが、決済総額が大きくなればなるほど、この手数料率を下げることができるのが一般的です。

決済実績のほとんどない会社が例えばクレジットカード決済を導入しようとすると、3%とか5%といった決済手数料になります。

これが、かなりの額の決済が発生する会社ともなると、1%程度まで少なくなります。当然、浮いた部分はすべて利益となります。

であれば、手数料率の交渉が有利になるよう、決済手段を分散しないようにしたい、というのは自然な考え方ですよね。

多くの動画配信サービスがクレジットカード決済かキャリア決済にしか対応していないのは、以下のような点からです。

  • 手数料率を低く抑えるため、実績を増やしたい
  • サポートコストが増えるため決済手段は増やしたくない
  • そもそも手数料率は決済方法によって異なっており、後発のペイサービスは手数料率が高いものが多い
  • 各種ペイサービスは最終的にはクレジットカード決済に紐づくことが多く、クレジットカードにさえ対応していればそもそも必要無い

大半のユーザーはクレジットカードを持っていますが、中にはクレジットカードを持つことができない人もいます。

学生の方や、支払い能力が低いと判断される前歴を持っていて審査が通らない人(平たく言えば借金がある人)などです。

クレジットカードを持っていない場合はキャリア決済に対応しておくと、携帯代金と一緒に合算で口座引き落としができたりするため、クレジットカードがない人の対応としてキャリア決済さえ押さえておけばほとんどのユーザーの支払い方法のニーズを満たすことができます。

一方で、支払い方法の対応力を差別化要素として打ち出すことも可能です。

比較的対応の少ない決済サービスに対応しておくことができればその支払い方法ができるサービスだけに絞って探す際に選ばれやすくなります。

ユーザーの利便性も高まり、加えて「大手感」も打ち出せるのでメリットは多い状況です。

対応デバイスと機能の決め方

最後に、対応デバイスや機能面の決め方について。

ぶっちゃけ、対応デバイスは、PC・スマホアプリ・FireTVシリーズに対応しておけば、ユーザーの95%以上は満足できるはずです。

対応デバイスで重要になってくるのが「開発コスト」です。各デバイス毎に専用の「アプリ」が存在する場合が多く、どこまで対応するかは重要な差別化のポイントです。

とりわけテレビで動画配信サービスを見る手段は多く、テレビ本体に内蔵されたアプリを使う場合・FireTVシリーズなどのデバイスを経由する場合・ブルーレイプレイヤーや果てはゲーム機でまで対応しています。

これら様々なデバイス毎に専用アプリを用意していくとなるとかなりのコストが生じることになります。

今、動画配信サービスに求められていること

既に集客手段を持っているか、本業とのシナジーを生み出せるかどうかが生き残りのカギ

日本で動画配信サービスが本格的に普及しはじめて5年以上が経過しようとしています。

初期のユーザー獲得競争は一旦落ち着いた印象を受けます。

一方では動画配信サービス自体の吸収合併・サービス終了など、プレイヤーが淘汰されたりし始めています。

現在生き残っている会社は、ほとんどが専業の会社ではなく、別に本業があったり、グループに別事業を行っていたりするところがほとんどです。

動画配信サービス単体での集客では十分ではなく、本業との相乗効果を狙って相互送客をしあってシナジーを生み出すことができるかどうかが生き残るための条件になってきているのかもしれません。

コンテンツのキーワードは独自か独占か網羅

配信しているコンテンツ自体がサービスの特徴となるのが動画配信サービス。

一利用者として感じる点としては、単になんとなく見たい作品があるから見てる、愛着があたったり、今後に期待したりしていることは特にない、という点です。

コンテンツ自体の方向性をユーザーに伝えていく姿勢がまだまだ弱いように思います。

例えばですが、以下のようなキーワードで、ユーザーに方向性を示してみるのも良いのではないでしょうか。

  • 独自:自社制作の動画を数多く手掛けていく方向性(ユーザーからすれば、魅力があればついていく)
  • 独占:独占配信契約を多く結び、他社配信させない方向性(ユーザーからすれば、解約したら見れなくなる動画が発生するのがいいやで継続させる)
  • 網羅:どんな作品も幅広く網羅し、ここなら何でもあるという方向性(ユーザーからすれば、とりあえずで選ぶ・押さえておく)

サブスク疲れを回避できる仕組みが必要

動画配信サービスの課金モデルである「サブスクリプション」は、サブスク疲れを引き起こしやすいという特徴もあります。

せっかくお金を使ってるのだから使わないと勿体ない、でも見たいものがあるわけでもない、という感覚で疲れてしまうのです。

また、配信が終了したりして、好きだった作品が見れなくなった場合に、別で見れるサービスを探したりする必要が出てしまうのもサブスク疲れを引き起こす一つの要因になっているでしょう。

今後はユーザーのサブスク疲れをいかに回避するか(解約率を下げるか)が各サービスにとっての課題となりそうです。

 

 

 

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